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相続税及び贈与税に関する規則

アメリカの相続税や贈与税は日本に比較して大変寛大な制度になっております。 この規則に関連してRegs. Sec. 20.2010-1があります。この規則は、相続税に関する控除や課税される相続額からの免除額について決められております。この規則を今回修正しました。トランプの税法改正 のもとでは課税の免除額が大きく変わったからです。
2018年1月1日以前の相続税と贈与税に関しては、$5,000,000の相続額や贈与額の免除額が規定されておりました。この免除額は、2011年以降のインフレ率にスライドされております。トランプの税法改正の元では、2017年12月31日以降、2026年1月1日までの免除額は$10,000,000に引き上げられました。2倍に免除額を引き上げる大胆な制度です。これについても2011年以降のインフレ率にスライドされるようになっております。従って具体的には、2017年は$5,490,000になり、2018年は$11,180,000、 2020年は $11,580,000の免除額となります。
この最終規則は、トランプの改正税法に合わせる処置を取ったことになります。IRSは、亡くなった人の年度に適用される贈与の免除額と贈与をした年度に該当する免除額の差について相続税、贈与税のレートを決める権限を与えられております。IRSの一存で勝手に決められるというのです。
この増額された$10,000,000の免除額は、2025年まで有効ですが、それ以降免除額は以前の$5,000,000に戻ります。従って2025年以降に亡くなった人は、前に贈与したものについて、フルに免除額が取れない可能性があるのです。この免除額が元に戻される事を免除額の”Clawback”と呼びます。Clawbackというのは、爪で掻き戻すというような意味です。
この不合理に対応するために、IRSは特別な規則を作りました。相続税について亡くなった人の免除額をベースに計算された税額控除額が、1976年以降の贈与税の計算で使われた免除額に基ずいて計算された税額控除額よりも低い場合、相続税の税額控除額は二つの税額控除額の内大きい方を取ることが出来るとしたのです。
例えば未婚の人が900万ドルの贈与をしたとします。この贈与は、贈与をした時点では、$10,000,000の免除額の対象になるので、贈与をした時点では贈与の全額900万ドルが免除となります。もしこの人が2025年以降に亡くなった場合、免除額は$5,000,000となります。亡くなった人にとっては、予期せぬ事だったのですが、表面的には致し方ありません。しかしながら、特別規則は、この場合、相続税に対する控除額は、$9,000,000になるとするのです。要するに、納税者に取って有利になるような処置を取ってくれたわけです。
この提案規則の改正については、色々とコメントが寄せられました。これらのコメントのいくつかを参考にして、この規則は改正されております。そのコメントの一つに規則が掲載した例題にはインフレによる修正がなされていないのではないかというものがありました。実際、 IRS は例題ではインフレ率の修正は入れておりません。しかしながら免除額という言葉はインフレを考慮した免除額と解釈されるために問題はないのではないかとしております。 
最終規則の上では亡くなった配偶者の未使用の免除額がClawback Ruleに従って計算してあるのではないかと言われております。実際にはこの配偶者の免除額は基本免除額か配偶者の免除額の未使用部分のいずれか低い方を採用するということになっております。そして、亡くなった配偶者の死亡時点の免除額を意味しているとしております。これにより配偶者の免除額は1,000万ドルが利用されることになり、500万ドルへ引き戻されることはないというのです。2025年までは、相続税、贈与税共に、免除額は$10,000,000であり、2025年以降に亡くなった人達も免除額が$5,000,000に引き戻されることなく、相続額や贈与する額が免除されることになるのです。納税者にとっては、大変な朗報であることには間違いありません。

山口 猛、パートナー
Yamaguchi Lion LLP
12/16/2019

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