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2019年度の個人所得税の注意点

トランプの税法改正 (Tax cuts and Jobs Act) は、2019年度においてどのように適用されるかについて見てみたいと思います。
税率については一般的に引き下げられましたが、最低の税率は10%で据え置き。累進課税の所得のグループ分け (Tax Bracket) は以前の通り、7つになっており、税率が引き下げられたと同時に適用される所得の額が高く設定されております。 例えば最高税率の39.6%の適用は夫婦合算申告者の場合480,050ドルから税率がまず37%に引き下げられ、更に、適用される課税所得の額が60万ドル以上に引き上げられております。
標準控除 (Standard Deduction) は、2019年度は独身の場合12,200ドル, 夫婦合算申告者の場合には24,400ドル, 扶養主の場合には18,350ドルとなります。
日本の扶養控除に相当する人的控除 (Personal Exemption) は 2019年度においては廃止されて利用できません。2017年度においては一人当たり4,100ドルの人的控除があったので、これは納税者にとっては大変に痛い改正です。
子女税額控除 (Child Tax Credit) につきましては、2019年は17歳以下の子女について2,000ドルの税額控除が享受できます。税金の還付を受けることができるので、納税者の税金がゼロであっても、このリファンドが受けられます。この子女税額控除については、調整総所得 (Adjusted Gross Income) の限度額が設定されており、独身者の場合は24万ドル、夫婦合算申告者の場合は44万ドル、扶養主の場合は24万ドル、夫婦個別申告者の場合は24万ドル以上の調整総所得がある人たちには利用できないようになっております。
教育に関連する税額控除には、アメリカの機会均等に関する控除 (American Opportunity Tax Credit – AOTC) と生涯学習に関する控除 (Lifetime Learning Credit – LLC) があります。 この二つの控除は、以前のまま据え置きで適用されることになっております。AOTCは、学費その他の経費の2,000ドルプラス次の2,000ドルの25%の合計金額が控除額になります (最高限度額は2,500ドル)。調整総所得が独身の場合8万ドルから9万ドル,夫婦合算申告者の場合は16万ドルから18万ドルの間で調整されていきます。
住宅ローンの金利控除は継続されましたが、住宅ローンの金利の対象になるローンの金額が100万ドルから75万ドルまでと引き下げられました。またホームエクイティローンの金利について10万ドルまでの控除が認められておりましたが、これが廃止になりました。しかし、もしこのローンが住宅の大改修に使われる場合、住宅ローンの一部として控除できることになっております。
慈善団体への寄付控除につきましては、修正総所得の60%まで控除できます.。医療費控除につきましては、2018年は修正総所得の7.5%を超える医療費について控除が認められましたが、2019年には10%に戻ることになっております。
州税や地方税の控除につきましては、2018年から控除の額が1万ドルまでと制限されました。この州や市に払う税金とは、不動産税や州や市に払う所得税又は売上税などがあります。トランプの税法改正前においては、納税者はこれらの税金を個別控除として控除しておりましたので、納税者にとっては大変な痛手になります。例えば自分の家を持って働く納税者は、おそらく不動産税と州や市に払う所得税を合算すると4万ドルとか5万ドル、あるいはそれ以上の税金を払っていたので、その控除できる金額が1万ドルに大幅に減額されるということになるのです。
オバマケアのペナルティーにつきましては、共和党の政府や議会はオバマケアを廃止しようとしましたが、成功しませんでした。しかしながら、健康保険を持っていない納税者に対してオバマケアのペナルティーと称される税金を課されるのを廃止することはできました。
パススルー所得控除では、パススルー所得の20%を所得控除として控除できます。この所得は自営業者やパートナーシップ、 LLC 、S法人などのパススルー企業体が得る所得を含みます。
代替ミニマム税とは金持ちが、色々な控除を使って税金を払わないので、金持ちにも正当な税金を払わせるための対策です。議会はこの代替ミニマム税を廃止 しようと試みましたが、成功しませんでした。しかしながらこの代替ミニマム税に若干の改正があります。 代替ミニマム税の問題は、免除額がインフレ率に応じて変更されなかったことでした。この不合理を避けるために、今後、代替ミニマム税の免除額はインフレスライドすることになりました。さらにこの代替ミニマム税の免除額そのものが次のように増額になりました。2019年度の代替ミニマム税の免除額は、独身者の場合$72,700、夫婦合算申告者の場合$111,700、夫婦別申告者の場合$55,850ドルになりました。更に、この免除額が無くなる金額が夫婦合算申告者の場合、$1,020,600、それ以外の人の場合、$510,300となっております。相続税がかかる金額は、2019年度は$11,400,000以上の金額になっております。これ以下の金額の相続には税金がかからないということになります。これらの改正点を頭に入れて税務申告書を作成しなければなりません。

山口 猛、 パートナー
Yamaguchi Lion LLP
10/17/2019

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