Blog

新しい機会を生み出す地域の税優遇策

2017年に発表されたトランプ大統領の改正税法には、アメリカおよびその統治領の中の貧困地域に対する投資の促進を図るための税優遇策が含まれておりました。その中の一つに“機会を生み出す地域の税優遇策 (The Opportunity Zone Tax Incentive) ”があります (IRC Section 1400Z-1 and 1400Z-2)。この新しい規則では、納税者が資産の売却から生ずるキャピタルゲインを、永久に繰り延べることができるのです。この税優遇策を受けるためには、納税者は、キャピタル ゲインを適格機会基金 (Qualified Opportunity Fund) に投資することを義務ずけられております。この基金は会社の形態かパートナーシップの形態を採用し、低所得者の居住する貧困地域のビジネスに投資ます。 2018年10月19日に財務省 (Treasury Department) と内国歳入庁 (Internal Revenue Service) が、この”新しい機会を生み出す地域 の税優遇策”に関する規則を提案致しました。それに先立って、2018年6月にはアメリカの50州の中の8,761のコミュニティー、ワシントン DC および五つのアメリカの統治領がこの機会を生み出す地域として指定されました。この指定された機会を生み出す地域は10年間その地位を継続することができます。そして投資家はこの地域に投資をし 、2017年12月21日以降に選択の手続きをとることによってキャピタルゲインに対する税金を2026年12月31日まで繰り延べることができます。具体的にはキャピタルゲインが発生した後180日以内に現金をこの適格機会基金に投資することによってキャピタルゲインに対する税金を繰延べることができます。 この税優遇策は税法1031条の不動産、特定の有形固定資産の交換による税金の繰り延べとは違います。キャピタルゲインは全てのキャピタルゲインが対象になります。また、たとえ2017年の税務申告が提出されていたとしても180日の条件を満たし、また2017年の税務申告書にその選択を記入するように修正申告することによって税金の優遇策を享受することができます。5年間投資を保持する場合にはキャピタルゲインの10パーセントの繰り延べが永久にでき、もし7年間保持した場合には更に5%を繰り延べることができます。10年間この投資を維持する場合には、キャピタルゲインの税金は永久に繰り延べることができるのです。更に売却時点では、その資産の税務上のベースを時価まで増加させることができます。この規則は S コーポレーション、その株主、エステート (遺産)、トラスト (信託)、その受益者にも適用されます。この繰延をしようとするキャピタル ゲインはこの機会を生み出す地域の基金に投資されなければなりません。この基金はQualified Opportunity Fund (QOF)と 呼ばれ、 この基金の形態としてはパートナーシップか会社組織でなければなりません。設立される州はアメリカの50州いずれでも構わず、その他 DC 及び五つのアメリカの統治領であってもいいということになっております。QOFは、投資の対象としてこの機会を生み出す地域の資産に90%以上の投資をすることが条件になります。投資家はもし10年間この投資を保持する場合には、売却時点で投資した資産の時価まで資産のベースを増加させることができます。また提案規則ではビジネスが所有ないしリースする有形固定資産の少なくとも70%がこの機会を生み出す地域の資産である場合には 、有形固定資産の大部分が機会を生み出す地域の資産であるとします。財務省と内国歳入庁は機会を生み出す 税優遇策に投資家が参加するために追加の規則を発表しました。2017年以降購入された土地に関する規則であり、その土地の最初の使用者であることを規定する規則になっております。内国歳入庁によると、この基金を設立するためには自分で証明書を発行し、基金の税務申告書に添付することになります。キャピタルゲインのある納税者にとっては、大変うれしい優遇策なのです。
山口 猛、パートナー
Yamaguchi Lion LLP
4/17/2019

コメントを残す

Your email address will not be published. Required fields are marked *

Copyright @ 2016 Yamaguchi Lion LLP | All Rights Reserved