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パス スルー事業体の事業所得の20%控除

パートナーシップやS法人 (米国税法のSubchapter Sに規定される法人であり、パートナーシップと同じ扱いになる)、信託などをパス スルー事業体 (Pass through entity) と言います。このパス スルー事業体は、決算期に帳簿を締めて損益を計算しますが、会社と違って事業体では税金を払わずにその事業体の出資者に損益を分配して、出資者が税金を払います。パス スルーの事業体の決算は普通に行われますので、その損益は大事です。このパス スルー事業体に対して、事業所得の20%を控除していいということがトランプの税法改正で発表されました。税法199A条に規定されております。今回はこの規定について説明します。
この税法199A条は、パススルー事業体の事業所得に対して一律20%の控除を認めますが、この控除は、二つのグループに分かれております。一つは米国内でのパス スルー事業体の適格事業 所得(Qualified business income) の20%を自動的に控除として認めるというものです。個人営業者、パートナーシップや S 法人、信託などの米国内での事業所得の20%を控除するというものです。 但し課税所得の額によってこの控除には制限があります。例えば夫婦合算申告者の場合には、課税所得が315,000ドルを超える場合 であり、夫婦個別申告者の場合には157,500ドルを超える場合に制限があります。その制限とは事業の種類や課税所得の額また事業体が支払う給与の額、そしてこれらの事業体が取得した資産の修正前のベースなどによる制限です。 C法人 (米国税法のSubchapter Cで規定された法人) や従業員として稼いだ所得には、この控除は適用されません。 二つ目の所得控除には、不動産信託 (Real estate trust – REIT) や市場で取引されるパートナーシップ (Qualified publicly traded partnership – PTP – income) の所得の合計額の20%があります。このグループの所得控除には,適格資産に関する制限はありません。この二つのグループの所得を合計したものが, 適格事業所得 (Combined qualified business income amount) と呼ばれます。 この適格事業所得は課税所得からネットキャピタルゲインを差し引いた額の20%を超えることはできません。この所得控除は、納税者が申告書の上で個別控除や標準控除を選択することに関係なく取ることが出来るのです。
この所得控除を享受するのはパス スルー事業体と言いましたが、実際の享受者は個人または信託であり、パススルー事業体はこの所得控除を出資者に分配することによって個人の出資者が所得控除を享受できるようにするのです。パス スルー事業体は、これらの所得控除を出資者の出資比率に応じて配分していくのです。
適格事業とは、いかなる事業でもいいのですが、次の二つの事業を含まないことになっております。最初の含まれない事業とは特定のサービス事業 (Specified service trade or business – SSTB)と言われるものであり、 次のような業種に関わるものを言います。すなわち、健康、法律、会計、年金数理、パフォーミング アーツ、コンサルテイング、スポーツ、金融サービス、投資、 投資管理、貿易、その他従業員の個人的な評判やスキルが所得のベースになってる仕事などです。夫婦合算申告書の場合、課税所得が315,000ドルを超える場合に上記の業種が除外さます。 その他の場合には157,500ドルを超える場合に除外されるのです。その金額を超えない場合には除外されません。 即ち、これらの金額を超えない場合には、これらの業種でも20%の所得控除が享受できるということです。第二の除外事項は, 従業員としてサービスを提供する場合です。この所得控除の計算は、納税者の課税所得からネットキャピタルゲインを差し引いた残額の20%の範囲以内で行われます。
そして納税者の課税所得が315,000ドル (夫婦合算申告者の場合、夫婦個別申告者の場合には$157,000) を 超える場合には、この所得控除は事業が特定事業かあるいは給与の額または会社が取得して使用する特定資産の修正前のベースなどによって制限されます。夫婦合算申告書の場合、課税所得が315,000ドルから415,000ドルの間の納税者の場合には、所得控除は制限されて漸減する形になります。 夫婦個別申告書の場合は、157,500ドルから207,500ドルの間です。そして課税所得が415000ドルや207,500ドルを超える場合には、 20%の所得控除はありません。

山口 猛、パートナー
Yamaguchi lion LLP
3/16/2019

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