Category "トピック"

アメリカのコロナ ウイルスの被害は、増える一方で、多くの失業者がでております。このような失業者を救済する為に、トランプ大統領は、2020年3月27日に、コロナ ウイルス被害者の保護、救済と経済安定保障法 (Coronavirus Aid, Relief, and Economic Security Act (CARES Act) の一部として、給与保証プログラム (Paycheck Protection Program (PPP))を発表しました。 総額3,490億ドルに及ぶ貸付金プログラムです。この詳細をみてみます。
対象になる経費は給与、 病欠、保険料、光熱費などの支払いになります。対象になる会社は、従業員が500人以下の会社であり (複数の場所に事業所がある場合、一つの事業者の従業員数が500人以下であれば該当する。但し、年間売上額に限度額がある)、非営利企業、自営業、独立契約者なども含まれます。中小企業庁 (Small Business Administration – SBA) のフランチャイズのリストに掲載されているホテルやレストランまたフランチャイズ形式の営業店、中小企業投資育成会社 (Small Business Investment Company) のプログラムを通じて融資を受けている中小企業なども対象になります。これらの対象企業は2020年2月15日まで営業をやっており、給料、税金 (給与源泉税) の支払いをやっていなければなりません。 このローンの申し込みはSBA、またアメリカ合衆国の財務省 (U.S. Department Treasury) が承認した銀行ないし銀行以外の会社を通じて申し込みます。そして、このローンの承認はこれらの銀行などが行います。ローンの申込期間は2020年3月15日から6月30日まで。ローンには限度額がありますが、最高1000万ドル。このローンの金額は各会社が支払う給料と連動し、給料の額に応じてローンの金額が決まります。このプログラムではSBAが、ローンの保証をします。ローンの保証は100%、期間は2020年12月31日まで。このローンの申請は、他の銀行で借入をしていても構いません。このローンを申請する為に は、このローンの使い道が、コロナ ウイルスの被害者の為であること、従業員の雇用を維持するために使われること、また同じ目的でその他のSBAの行ったローンと重ならないことなどです。このローンを得るために、特別にフィーは必要ありません。また担保や個人の保証を入れる必要もありません。金利は最高4%までであり、銀行が金利のレートを決めます。万一、ローンの前払いをした時には、前払いに関連するペナルティ又はフィーもありません。ローンの返済延長はまず6ヶ月、さらに6か月延長することができます。さらにこのローンの一部が免除されます。ローンをしてから最初の8週間で会社が使った金額が免除されるのです。ローンの免除を得る為には、金融機関に書類を提出します。このローンの免除は前年度と比較して従業員の数が減少している場合には、それに比例して減額されます。この8週間以内に従業員の再雇用がある場合には、支払ったペナルティは免除されます。12/31/2020までに免除されなかったり、支払いが残った場合には、このローンは、最高1年ローンに切り替えられます。その場合の金利は最高4%であり、SBAの100%の保証は継続されます。このローンの開始日以降8週間の期間の間に会社が使った費用が免除の対象になります。免除の対象になる費用としては、給与、2020年2月15日以前の住宅ローンの返済額、住宅ローンの支払い金利、家賃、又、公共料金の支払いです。ローンの免除については、借りた元本の額を超えることはできません。又、10万ドルを超える給与は対象になりません。ローンの免除の計算方法は、PPPプログラムが始まってから8週間の間に支払った給与、ローンの金利、家賃、水道光熱費ですが、給与については前年と同じ水準の雇用を維持するための給与ということであり、もし前年より雇用が減っている場合には減額されます。ローンの免除の為に提出する書類は、銀行のステートメントかチェックのコピーとなります。ローンの免除は書類を提出してから、60日以内になります。ローンが免除されない場合には、このローンは金利4%、最高10年間のローンに変更されます。SBAの100%保証は継続されます。しかし、募集が多く、最近、一時的に受付が中止になり、再開のニュースが待たれます。
山口 猛、パートナー
Yamaguchi Lion llp
4/18/2020

新型コロナ ウイルス (以下“コロナウイルス”) の影響は世界的ですが、アメリカもその被害が日々増大しております。このコロナウイルスにかかった患者の数が、アメリカでは毎日1,000人単位で増えており、すでに1万人を超えた状況 (3月20日現在)です。大きな集会を開催する会場は閉鎖され、スポーツ会場や劇場は閉鎖、レストランも開店休業の状態、学校は長期で休校となっております。会社の従業員も自宅勤務が増えております。このような状況の中で、トランプ大統領は、3月13日に、コロナウイルスの被害状況を見て、スタフォード災害救助、緊急援助法 (Stafford Disaster Relief and Emergency Assistance Act – Stafford Act) の下で税金支払いに関する緊急対策を発表致しました。この法律は、自然災害などを念頭に置いておりますが、大統領の発令があると、内国歳入庁 (Internal Revenue Service – IRS) は、税金の支払いを一定期間延長することができるのです。
3月18日にコロナウイルスの被害に関連して発表されたのは、個人所得税及び法人所得税の支払いを4月15日から7月15日まで3ケ月延長するものでした (通達 2020-17) 。この91日間の税金支払いの期限延長の恩恵を受けるのは、会社の場合、支払う税金の額が$10,000,000までであり、個人やその他の納税者の場合には、税額が$1,000,000までとなっておりました。個人の場合、独身者、夫婦合算申告をする人の場合には、支払う税金の限度額が$1,000,000でした。
しかしながら、コロナウイルスの影響が拡大する中で、IRSは新たに連邦所得税の支払い及び申告書の提出について新通達を発表しました。この通達は2020-18と呼ばれるものです。この通達が適用されるのは、個人、信託、相続財産、パートナーシップ、協会、会社となっており、以前に説明があった小規模法人 (S Corporation)を 適用外にするようなことはありません。これらの対象の納税者の申告書の提出期限と税金の支払いの期限が共に7月 15日まで延長されることになりました。4月15日に、申告書の提出の延長願いのフォーム4868 (個人) 、7004 (法人) を提出する必要もありません。前にあった金額制限 (法人の場合$10,000,000、個人の場合、$1,000,000) も排除され、金額に関係なく期限の延期が認められることになりました。4月15日から7月15日までの間の期間の金利やペナルテイーの計算も行われません。金利やペナルテイーの計算は7月15日から始まります。
この通達が適用されるのは、2019年度の連邦法人及び個人所得税に関する申告書の提出期限と税金支払い、および予定納税に関連するものであり、そのほかの納税者又税金には適用されません。そのほか州の税金の支払いも連邦とは違いますので、各々の州の規則を見る必要があります。コロナ ウイルスの影響が税金の支払いにまで影響してきたお話しでした。
山口 猛、パートナー
Yamaguchi Lion LLP
3/19/2020

トランプ大統領が2021年度の予算を発表いたしました。その中で注目されるのが相続税と個人の所得税減税の延長です。これらの減税は2017年の大統領の減税策 (2017 Tax Cuts and Jobs Act (P.L. 115-97 : TCJA)) の中に記載されておりました。個人所得税については10%から37%までの累進課税になっておりますが、独身者の場合、最高税率の37%が適用されるのは50万ドル以上、夫婦合算申告をする納税者の場合には60万ドル以上、夫婦個別申告をする人の場合は最高税率は37%、適用されるのは30万ドル以上になっております。この改正以前の最高税率は39.6%、適用されるのは独身者の場合41万8400ドル、 夫婦合算申告者の場合最高税率は39.6%、適用されるのは47万700ドル、夫婦個別申告をする人の場合には最高税率は39.6%、適用されるのは235,350ドルからになっておりましたので、改正税法でかなりの減税になったことになります。そしてこの改正税率が適用されるのは2025年までということになっていたのですが、今回、この適用年度を10年延ばして、2035年までとするのです。
相続税については、今回の予算の中では、最高税率は37%になっており、適用されるのは課税所得が1,250万ドルを超過する部分になります。 改正前の相続税の最高税率は39.6%であったので、2.6%の減税になります。適用される課税所得は1,250万ドルで変わりはありません。
大統領の予算 は120億ドルですが、特にインフォメーション テクノロジーの近代化を図るために3億ドルの予算を充当することになっております。その他、納税者が税務署と連絡する時に使う為に安全に、又、電子的に交信が可能になるような対策を講じることになっております。税務署が納税者と交信する場合の方法をデジタル化することによって納税者が税務署により迅速に、より正確に対応できるのです。また税務署の電話の ライン にコール バックの機能装置を設置いたします。今まで税務署に電話をすると長時間待たされるのが常でありましたので、効率が大変に良くなるわけです。その他、税務調査などの作業を円滑にするために資金を追加投資することを計画しております。 この結果、税務署としては796億ドルの追加の収入が発生することが予想され、コストが155億ドルですから、646億ドルのコスト セービングが将来10年にわたって発生することになるのです。その他には税務申告書作成する税理士、その他の人の監督を強化したり、税金を還付する前に申告書の過ちをチェックする権限を税務署に与えることを考えております。また税額控除などを申請する時に正式な社会保障番号を提供させたり、給料やその他の情報の報告を 要請します。

マイクロキャプティブ保険に参加する人たちへの対策

2014年にマイクロキャプティブ保険の取引が出現して以来、税務署 (Internal Revenue Service- IRS) はこの取引が濫用されることを心配しておりました。 このマイクロキャプティブ保険取引というのは、関連会社のグループの中でキャプティブ保険会社が会社の保険契約を使って課税所得を故意に削減しようとする取引です。この 取引では、契約の元で被保険会社が保険料支払いを経費として控除します。そして、キャプテイブ保険会社が税法831条によって課税は投資取得に限定することを選択します。この方法によると、キャプテイブ保険会社が受け取るプレミアムが課税所得から除外されることになるのです。税務署はこのようなマイクロキャプティブ保険取引は、脱税の可能性があると結論ずけたのです。
税務署はこのマイクロキャプティブ保険やその他の脱税取引の監督を強化することを発表しました。税務署は新たに12の調査グループのチームを設置いたしました。彼らは税務署の大規模企業グループ、国際グループまた中小企業、自営業者グループの中から人員を調達して、税務調査の強化を図ったのです。税務署は、この通達でマイクロキャプティブ保険取引に参加している会社は税務署の特別部門 (Office of Tax Shelter Analysis) に報告することを義務付けました。
また適切な開示を怠った場合には、多額のペナルティが課されることになっております。このような取引に関与している会社は、対策について信頼おける税務アドバイザーに早急に相談することを奨励しております。タックス ヘイブンの国に設立されたキャプテイブ保険会社が無くなる日が来るのかもしれません。

山口 猛、パートナー
Yamaguchi Lion LLP
2/19/2020

米国公認会計士 三村琢磨

2018年に米国が仕掛けて始まった米中貿易戦争は、2020年1月15日に両国が「第1段階の貿易合意」に署名し、それまでエスカレートする一方であった関税引上げ合戦がひとまず一服しました。しかし下記表のとおり、未だリスト4の関税引下げ(リスト4Bは取消し)のみにとどまっており、大部分の上乗せ関税が残っています。そもそも、自国にもはね返りがあることは承知の上で敢えてこの貿易戦争を仕掛けた、経済大国として台頭著しい中国を懲らしめたい米国現政権の意図及び大統領選を見据えたトランプ氏の思惑を考えると、今後行われる第2段階合意に向けた協議も楽観視できず、米中間の関税率が元の水準に戻るまでには相当な時間がかかりそうです。尚、多くの日系企業も、中国子会社で作った製品を米国に輸出している為、米中貿易戦争は日本経済にも悪影響を及ぼしています。
(米国通商法301条に基づく中国からの輸入品に関する追加関税リスト概要表:第1次段階合意迄)

(上記表のリスト4A、4Bにおける下線部分が第1段階合意における米国の減免措置)
今回の第1段階合意の背景として、リスト4の製品(特に殆どが中国で作られているアップル社のiPhone)に関税を上乗せすることによる自国の企業及び国民への悪影響を米国が配慮したと推測されます。一方、本合意において中国側は主に関税以外での知的財産権保護、金融サービスの開放等の譲歩を行っていますが、最大の目玉は今後2年間で2,000億米ドルの製造品、農産物、エネルギー製品およびサービスを米国から追加購入すると約束した事です。しかし、数字が大きすぎる事もあってその実現性には懐疑的な報道が多く、確かにこれは中国による時間稼ぎ戦略かもしれません。
(米中貿易戦争以降の両国の貿易収支)

米国は対中を含む貿易赤字を2019年に若干ながら減らしており、これを“成果”としてアピールしています。一方中国の輸出は対米の減少にもかかわらず全体では減っておらず、貿易黒字が更に増加しました。何れにせよ両国の貿易縮小が世界経済に与えたマイナスの影響は大きく、日本の貿易額も2019年は輸出入共に約5%減少しました。今年に入ってから新型肺炎の流行がアジア経済を直撃していますが、貿易戦争も並行して続く事により、中国のみならずグローバルな景気減速の深刻化が懸念されます。

アメリカの相続税や贈与税は日本に比較して大変寛大な制度になっております。 この規則に関連してRegs. Sec. 20.2010-1があります。この規則は、相続税に関する控除や課税される相続額からの免除額について決められております。この規則を今回修正しました。トランプの税法改正 のもとでは課税の免除額が大きく変わったからです。
2018年1月1日以前の相続税と贈与税に関しては、$5,000,000の相続額や贈与額の免除額が規定されておりました。この免除額は、2011年以降のインフレ率にスライドされております。トランプの税法改正の元では、2017年12月31日以降、2026年1月1日までの免除額は$10,000,000に引き上げられました。2倍に免除額を引き上げる大胆な制度です。これについても2011年以降のインフレ率にスライドされるようになっております。従って具体的には、2017年は$5,490,000になり、2018年は$11,180,000、 2020年は $11,580,000の免除額となります。
この最終規則は、トランプの改正税法に合わせる処置を取ったことになります。IRSは、亡くなった人の年度に適用される贈与の免除額と贈与をした年度に該当する免除額の差について相続税、贈与税のレートを決める権限を与えられております。IRSの一存で勝手に決められるというのです。
この増額された$10,000,000の免除額は、2025年まで有効ですが、それ以降免除額は以前の$5,000,000に戻ります。従って2025年以降に亡くなった人は、前に贈与したものについて、フルに免除額が取れない可能性があるのです。この免除額が元に戻される事を免除額の”Clawback”と呼びます。Clawbackというのは、爪で掻き戻すというような意味です。
この不合理に対応するために、IRSは特別な規則を作りました。相続税について亡くなった人の免除額をベースに計算された税額控除額が、1976年以降の贈与税の計算で使われた免除額に基ずいて計算された税額控除額よりも低い場合、相続税の税額控除額は二つの税額控除額の内大きい方を取ることが出来るとしたのです。
例えば未婚の人が900万ドルの贈与をしたとします。この贈与は、贈与をした時点では、$10,000,000の免除額の対象になるので、贈与をした時点では贈与の全額900万ドルが免除となります。もしこの人が2025年以降に亡くなった場合、免除額は$5,000,000となります。亡くなった人にとっては、予期せぬ事だったのですが、表面的には致し方ありません。しかしながら、特別規則は、この場合、相続税に対する控除額は、$9,000,000になるとするのです。要するに、納税者に取って有利になるような処置を取ってくれたわけです。
この提案規則の改正については、色々とコメントが寄せられました。これらのコメントのいくつかを参考にして、この規則は改正されております。そのコメントの一つに規則が掲載した例題にはインフレによる修正がなされていないのではないかというものがありました。実際、 IRS は例題ではインフレ率の修正は入れておりません。しかしながら免除額という言葉はインフレを考慮した免除額と解釈されるために問題はないのではないかとしております。 
最終規則の上では亡くなった配偶者の未使用の免除額がClawback Ruleに従って計算してあるのではないかと言われております。実際にはこの配偶者の免除額は基本免除額か配偶者の免除額の未使用部分のいずれか低い方を採用するということになっております。そして、亡くなった配偶者の死亡時点の免除額を意味しているとしております。これにより配偶者の免除額は1,000万ドルが利用されることになり、500万ドルへ引き戻されることはないというのです。2025年までは、相続税、贈与税共に、免除額は$10,000,000であり、2025年以降に亡くなった人達も免除額が$5,000,000に引き戻されることなく、相続額や贈与する額が免除されることになるのです。納税者にとっては、大変な朗報であることには間違いありません。

山口 猛、パートナー
Yamaguchi Lion LLP
12/16/2019

米国公認会計士 三村琢磨

Fair Tax Markという2014年に設立された比較的新しい英国の非政府系組織は、これまで約50社の公正に法人税を支払っている企業に対し認証を与えています。これまでその活動は英国にとどまっていましたが、今般は国外に目を向け、デジタル・サービス税がフランスで導入されOECDなど世界的レベルでも検討されるきっかけになった、GAFA (Google、Apple、Facebook、Amazon)をはじめとする米国大手IT企業の大規模な租税回避について検証するレポートを先月(2019年12月)発表しました。
本レポートは、GAFA+2社(Netflix、Microsoft)がいずれもシリコンヴァレー等米国西海岸に本社を置く事から、これら6社を“Silicon Six”と称し、各社の過去10年間における租税回避度合を悪質な順にランク付けしています。Silicon Six各社のSEC提出開示資料を基にした分析であり、特に目新しい部分はないものの、客観性は保たれており、各社の米国外での大規模な節税を数字で裏付ける内容となっています。以下、レポートの概要を紹介します。
(全般)
Silicon Sixの時価総額合計は$4.5兆(500兆円弱)と、ロンドン証券取引所に上場する1,000社超の企業の時価総額合計を上回っている。また、これを上回る経済規模の国は米国、中国、日本のみである。
このような、今や世界経済に大きな影響を与えるSilicon Sixが過去10年間(2010~2019年)に実際に支払った税額は合計$1,802億(約20兆円)と、税前利益($1兆1,095億<約122兆円>)の16.2%にとどまり、Silicon Sixの帳簿上の法人税支払額$2,805億(約30兆円)に比べ$1,000億も少ない。米国の法人税率が2017年まで35%(州税も含めた実効税率は約40%)であった事を考えると非常に少ない納税額であり、各社の節税指向を示している。
Silicon Sixは米国外で大規模な節税をしていると考えられる。実際Silicon Sixの帳簿上の支払税率は全体では税前利益の25.3%だが、米国外では8.4%と極端に低くなっている。
一方、米国上場企業が開示を要請されるUTB(uncertain tax benefits、税務調査において追徴される可能性の高い金額)は、Silicon Six合計で2010年の$89億(約9,800億円)から2019年は$473億(約5兆2千億円、追徴された場合の延滞税、ペナルティを含む)と10年間で5倍以上に急増しており、各社の節税指向が更に進んでいる事を示している。
(Silicon Sixの租税回避度ランキング)
1.Amazon
Amazonは過去10年間に実際に支払った税額が$34億ドル(約3,700億円)と規模の割に非常に少なく、税前利益に対する支払税率も12.7%と低い。米国外では殆ど税金を払っていないのを利して各国でマーケットシェアを拡大している。更に同社は直近で$93億(約1兆円)の繰越損失がある為、当面まともに税金を払いそうにない。
2.Facebook
売上規模はAmazonの5分の1以下にもかかわらず、過去10年ではAmazonの2倍以上となる$77億(約8,500億円)の税金を実際に支払っている。但しFacebookの実際に支払った税額の税前利益に対する率10.2%、及び米国外における帳簿上の支払税率5%は、共にSilicon Six中最低である。
3.Google(現在の上場企業名はAlphabet Inc.)
Googleは、全世界の支払税率23%はOECD加盟国平均(23.7%)に則していると説明しているが、同社が過去10年間実際に払っている税額の税前利益に対する割合は15.8%と低い。米国外における帳簿上の支払税率も過去10年平均で7.1%と非常に低いが、2018年度の同支払税率は6.5%と更に下がっており、節税指向に変化がない事を示している。
4.Netflix
過去10年間実際に払っている税額の税前利益に対する割合は15.8%と、Googleと同率であり低い。同社の利益率が他社に比べて低いこともあるが、過去10年間の実際の支払税額は$5.2億(約572億円)と断トツで少ない。
5.Apple
 自ら「世界最大の納税者」と言うだけあり、過去10年間の実際の支払税額は$938億(約10兆3千億円)とSilicon Six中最大である。しかし、その実際の支払税額の税前利益に対する率は17.1%、米国外における帳簿上の支払税率も8.9%と共に低く、グローバルな節税をうかがわせる。
6.Microsoft
 過去10年の実際の支払税額は$469億(約5兆1,600億円)とAppleに次いでSilicon Six中2位(但し税前利益に対する率は16.8%と低い)。LinkedIn買収資金手当の必要もあったが、オフショアの利益を最近米国に戻した。Silicon Sixの中では僅差だが最も租税回避度の低い企業と判断される。

アメリカの相続税や贈与税は日本に比較して大変寛大な制度になっております。 この規則に関連してRegs. Sec. 20.2010-1があります。この規則は、相続税に関する控除や課税される相続額からの免除額について決められております。この規則を今回修正しました。トランプの税法改正 のもとでは課税の免除額が大きく変わったからです。
2018年1月1日以前の相続税と贈与税に関しては、$5,000,000の相続額や贈与額の免除額が規定されておりました。この免除額は、2011年以降のインフレ率にスライドされております。トランプの税法改正の元では、2017年12月31日以降、2026年1月1日までの免除額は$10,000,000に引き上げられました。2倍に免除額を引き上げる大胆な制度です。これについても2011年以降のインフレ率にスライドされるようになっております。従って具体的には、2017年は$5,490,000になり、2018年は$11,180,000、 2020年は $11,580,000の免除額となります。
この最終規則は、トランプの改正税法に合わせる処置を取ったことになります。IRSは、亡くなった人の年度に適用される贈与の免除額と贈与をした年度に該当する免除額の差について相続税、贈与税のレートを決める権限を与えられております。IRSの一存で勝手に決められるというのです。
この増額された$10,000,000の免除額は、2025年まで有効ですが、それ以降免除額は以前の$5,000,000に戻ります。従って2025年以降に亡くなった人は、前に贈与したものについて、フルに免除額が取れない可能性があるのです。この免除額が元に戻される事を免除額の”Clawback”と呼びます。Clawbackというのは、爪で掻き戻すというような意味です。
この不合理に対応するために、IRSは特別な規則を作りました。相続税について亡くなった人の免除額をベースに計算された税額控除額が、1976年以降の贈与税の計算で使われた免除額に基ずいて計算された税額控除額よりも低い場合、相続税の税額控除額は二つの税額控除額の内大きい方を取ることが出来るとしたのです。
例えば未婚の人が900万ドルの贈与をしたとします。この贈与は、贈与をした時点では、$10,000,000の免除額の対象になるので、贈与をした時点では贈与の全額900万ドルが免除となります。もしこの人が2025年以降に亡くなった場合、免除額は$5,000,000となります。亡くなった人にとっては、予期せぬ事だったのですが、表面的には致し方ありません。しかしながら、特別規則は、この場合、相続税に対する控除額は、$9,000,000になるとするのです。要するに、納税者に取って有利になるような処置を取ってくれたわけです。
この提案規則の改正については、色々とコメントが寄せられました。これらのコメントのいくつかを参考にして、この規則は改正されております。そのコメントの一つに規則が掲載した例題にはインフレによる修正がなされていないのではないかというものがありました。実際、 IRS は例題ではインフレ率の修正は入れておりません。しかしながら免除額という言葉はインフレを考慮した免除額と解釈されるために問題はないのではないかとしております。 
最終規則の上では亡くなった配偶者の未使用の免除額がClawback Ruleに従って計算してあるのではないかと言われております。実際にはこの配偶者の免除額は基本免除額か配偶者の免除額の未使用部分のいずれか低い方を採用するということになっております。そして、亡くなった配偶者の死亡時点の免除額を意味しているとしております。これにより配偶者の免除額は1,000万ドルが利用されることになり、500万ドルへ引き戻されることはないというのです。2025年までは、相続税、贈与税共に、免除額は$10,000,000であり、2025年以降に亡くなった人達も免除額が$5,000,000に引き戻されることなく、相続額や贈与する額が免除されることになるのです。納税者にとっては、大変な朗報であることには間違いありません。

山口 猛、パートナー
Yamaguchi Lion LLP
12/16/2019

トランプの税法改正 (Tax cuts and Jobs Act) は、2019年度においてどのように適用されるかについて見てみたいと思います。
税率については一般的に引き下げられましたが、最低の税率は10%で据え置き。累進課税の所得のグループ分け (Tax Bracket) は以前の通り、7つになっており、税率が引き下げられたと同時に適用される所得の額が高く設定されております。 例えば最高税率の39.6%の適用は夫婦合算申告者の場合480,050ドルから税率がまず37%に引き下げられ、更に、適用される課税所得の額が60万ドル以上に引き上げられております。
標準控除 (Standard Deduction) は、2019年度は独身の場合12,200ドル, 夫婦合算申告者の場合には24,400ドル, 扶養主の場合には18,350ドルとなります。
日本の扶養控除に相当する人的控除 (Personal Exemption) は 2019年度においては廃止されて利用できません。2017年度においては一人当たり4,100ドルの人的控除があったので、これは納税者にとっては大変に痛い改正です。
子女税額控除 (Child Tax Credit) につきましては、2019年は17歳以下の子女について2,000ドルの税額控除が享受できます。税金の還付を受けることができるので、納税者の税金がゼロであっても、このリファンドが受けられます。この子女税額控除については、調整総所得 (Adjusted Gross Income) の限度額が設定されており、独身者の場合は24万ドル、夫婦合算申告者の場合は44万ドル、扶養主の場合は24万ドル、夫婦個別申告者の場合は24万ドル以上の調整総所得がある人たちには利用できないようになっております。
教育に関連する税額控除には、アメリカの機会均等に関する控除 (American Opportunity Tax Credit – AOTC) と生涯学習に関する控除 (Lifetime Learning Credit – LLC) があります。 この二つの控除は、以前のまま据え置きで適用されることになっております。AOTCは、学費その他の経費の2,000ドルプラス次の2,000ドルの25%の合計金額が控除額になります (最高限度額は2,500ドル)。調整総所得が独身の場合8万ドルから9万ドル,夫婦合算申告者の場合は16万ドルから18万ドルの間で調整されていきます。
住宅ローンの金利控除は継続されましたが、住宅ローンの金利の対象になるローンの金額が100万ドルから75万ドルまでと引き下げられました。またホームエクイティローンの金利について10万ドルまでの控除が認められておりましたが、これが廃止になりました。しかし、もしこのローンが住宅の大改修に使われる場合、住宅ローンの一部として控除できることになっております。
慈善団体への寄付控除につきましては、修正総所得の60%まで控除できます.。医療費控除につきましては、2018年は修正総所得の7.5%を超える医療費について控除が認められましたが、2019年には10%に戻ることになっております。
州税や地方税の控除につきましては、2018年から控除の額が1万ドルまでと制限されました。この州や市に払う税金とは、不動産税や州や市に払う所得税又は売上税などがあります。トランプの税法改正前においては、納税者はこれらの税金を個別控除として控除しておりましたので、納税者にとっては大変な痛手になります。例えば自分の家を持って働く納税者は、おそらく不動産税と州や市に払う所得税を合算すると4万ドルとか5万ドル、あるいはそれ以上の税金を払っていたので、その控除できる金額が1万ドルに大幅に減額されるということになるのです。
オバマケアのペナルティーにつきましては、共和党の政府や議会はオバマケアを廃止しようとしましたが、成功しませんでした。しかしながら、健康保険を持っていない納税者に対してオバマケアのペナルティーと称される税金を課されるのを廃止することはできました。
パススルー所得控除では、パススルー所得の20%を所得控除として控除できます。この所得は自営業者やパートナーシップ、 LLC 、S法人などのパススルー企業体が得る所得を含みます。
代替ミニマム税とは金持ちが、色々な控除を使って税金を払わないので、金持ちにも正当な税金を払わせるための対策です。議会はこの代替ミニマム税を廃止 しようと試みましたが、成功しませんでした。しかしながらこの代替ミニマム税に若干の改正があります。 代替ミニマム税の問題は、免除額がインフレ率に応じて変更されなかったことでした。この不合理を避けるために、今後、代替ミニマム税の免除額はインフレスライドすることになりました。さらにこの代替ミニマム税の免除額そのものが次のように増額になりました。2019年度の代替ミニマム税の免除額は、独身者の場合$72,700、夫婦合算申告者の場合$111,700、夫婦別申告者の場合$55,850ドルになりました。更に、この免除額が無くなる金額が夫婦合算申告者の場合、$1,020,600、それ以外の人の場合、$510,300となっております。相続税がかかる金額は、2019年度は$11,400,000以上の金額になっております。これ以下の金額の相続には税金がかからないということになります。これらの改正点を頭に入れて税務申告書を作成しなければなりません。

山口 猛、 パートナー
Yamaguchi Lion LLP
10/17/2019

米国公認会計士 三村琢磨

今年の国際課税の話題はもっぱらデジタル課税でした。GAFA(Google, Amazon, Facebook, Apple)をはじめとする大手IT企業が大掛かりな節税を行い、米国以外では殆ど税金を払っていない事に対しEUや欧州諸国は看過せず課税案を打ち出し、特にフランスは率先して今年7月、大手オンライン企業の仏国内売上の3%に課税するデジタルサービス税(DST)導入を決定しました。一方経済協力開発機構(“OECD”)は、そのような各国独自の課税による国同士の対立や経済の混乱を防ぐ為国際協調的なDST案作成を進めています。今年2月に発表した公開草案では、主要国の異なる主張を代表する3つのDST案を発表するにとどまりましたが、この程「統一アプローチに関する事務局提案」を10月9日付で発表しました。OECDは本案について「OECD事務局による、各国による複数の提案をとりいれた統一案である。この案で各国の合意が得られた訳ではなく、今後の議論の叩き台としての位置付けである」と発表しています。
OECD統一案の概要
 OECD統一案の主な特徴は以下の通りです:
1.課税対象企業:consumer-facing-business(消費者向け事業)を対象とするとしています。ここで言う消費者は個人のみならず最終ユーザーも含まれるので、ネット広告事業のように企業を対象とする事業も含まれます。“消費者向け事業”にどのような業界が含まれ、あるいは除外されるかの定義については未定ですが、GAFA等のインターネット事業を行うIT企業のみならず、製薬会社、家電メーカーなど最終消費者にモノを販売する企業は全て含まれる可能性があります。これは正に、GAFA等に対する狙い撃ち課税を嫌う米国の提案が反映されたものです。
2.課税の基準:これまでの「拠点なければ課税なし」の大原則にとらわれず、拠点がなくても一定以上の売上をあげていれば、その国で課税できるとします。この「一定以上の売上」の額についても、国別報告書の提出基準である€750百万(約900億円)のような単一の基準か、各国の経済規模に応じた異なる額が設けられるのか等、現時点では全く未定です。
3.利益配分基準:統一案では、以下(A)~(C)の3段階の利益配分案を提案しています。
(A)販売国への残余利益配分(新課税権):売上が発生しているにもかかわらず拠点が無いIT企業に対し課税できない国に新たな課税権を配分する事がこの段階の主な目的ですが、米国の意向を反映したと思われる限定的な仕組みとなっています。まずは、(1)消費者向け事業に携わる多国籍企業の連結損益計算書上の利益から、ノウハウ等を要しない通常の活動から生まれる利益(routine profit)を差引き、残りの利益、つまりノウハウを含む無形資産等から生じる残余利益(residual profit)を算出します。次に、(2)residual profitを、販売市場関連の利益とその他(技術的なノウハウ等の無形資産など)の利益に分割し、最後に(3)販売市場関連の利益を、該当する各国で(売上高等に比して)配分します。つまり、各国での配分対象となるのは、residual profitの内販売市場関連の利益に限定されますので、現在フランスが開始したような、国内売上全体に対する課税に比べ販売市場各国で課税できる額は限られると予想されます。また、利益の配分方法として、routine profitの算出やresidual profitを販売市場関連とその他に分割する際の算出には移転価格税制における比較対象分析ではなく、より簡便法である固定レート(料率は未定)を用いるとされます。これは比較対象分析に要する多くの時間と費用が新課税権の適用を阻害しないようにとの配慮によるものですが、移転価格税制において、routine profitの算出やresidual profitの分割に固定レートを用いた簡便法は、企業の事情が個別に異なる中で極めて難しいとして適用されてこなかった経緯があります。世界各国が合意するような簡便法の料率を決めることは実際にはきわめて難しいと予想されます。
(B)販売国に通常の利益を配分:この段階では、販売国においてresidual profitのみならず、販売機能に関するroutine profitも配分します。ここでも各国におけるroutine profitの算出は、紛争やコンプライアンス費用増加を避ける為、固定料率により行うとしています。
(C)既存の移転価格算定方法に基づく追加的課税:上記(A)や(B)で得た課税対象利益が、自国での企業の販売活動等に鑑みて過少と判断される場合、この段階で各国は従来の移転価格税制に基づき追加の利益を認定の上課税します。但しその場合各国間で紛争が起きる可能性が高まることから、強制的仲裁制度などの紛争解決手段が強化されなければならないとします。
所見
 結局は、欧州も米国のパワーに屈したという事でしょうか。しかし、本来GAFAによるアイルランドやルクセンブルグなどの小国を使った大規模な節税を防止する為の筈だったDST対策が、結局このような、IT企業に対象を絞れず且つ限定的な利益しか配分できない案になってしまえば、世界中の税務当局及び企業が多大な準備の時間とコストを負担してまで本統一案を導入する意義があるのか、疑問視せざるをえません。

アメリカの市民権を保有する人達やアメリカの永住権を保有する人たちが、最終的に 市民権や永住権を放棄することがあります。 アメリカの税務署はこのような人たちがアメリカで税金を払わないでアメリカを離れることがないように報告書 (フォーム8854) を提出する規則を作っております。基本的に、外国人は、アメリカを離れた後は、アメリカの税金を払う必要はないのです。この報告書では、放棄の年度と過去5年間に特定の報酬額以上の報酬がなかったこと、保有する資産が一定額以下であれば、報告義務がないとされております (税法877条、877A条)。 最近、税務署はアメリカ市民や永住権者がアメリカの市民権、永住権を放棄する年度の資産の報告義務に関する税法877Aの条項を改正しました。
この 税法 877A条の規則のもとでは不動産などの資産をアメリカに所持している人の場合, アメリカの市民権、永住権を放棄する直前の不動産の時価での売却益から60万ドルを差し引いた額を仮定して税金を払うようにしておりましたが、最近発表された改正規則では、資産の純売却益が725,000ドルを超える額というように増額しました。この改正以前には、所有する不動産などについて、市民権、永住権を放棄する年度において、想定する資産の売却益から60万ドルを差し引いた税金を支払うこととなっておりましたので、かなり大きな金額を免除してくれるので、納税者にとっては朗報です。このアメリカの市民権や永住権の放棄年度の資産の報告義務に関する税法877Aが適用される対象になる人は ,市民権、永住権を放棄する前の5年間について特定額以上の税金(2019年は168,000ドル)を支払っていたこと、純資産が200万ドル以上所有していたこと、過去5年間で 申告書の提出や支払いをしたことを証明できない人となっております。例え所得税が168,000ドル以下であり、また純資産が200万ドル以下であったとしてもこの証明が出来ない場合には、このフォーム8854を提出することになります。このフォームは4ページあり、市民権、永住権の放棄した日、居住した国、アメリカ市民になった日、過去5年間の支払った税金額、保有する資産の明細、その資産の時価、コスト、売却損益、控除額を差し引いた後の売却損益額、繰延べる税金の額などを記入します。過去5年間に支払った所得税の税金の限度額は、2013年 157,000ドル、 2015年 160,000ドル、 2016年161,000ドル, 2017年162,000ドル 、2018年165,000ドルとなっております。この税金の額を超えない場合には、報告義務を免除されるのです。税金は所得税のみならず贈与税も含み、情報の報告だけをする申告書例えば外国に保有する特定金融資産 – フォーム8938も含みます。それからFBAR (Report of Foreign Bank and Financial Accounts) – と呼ばれるFinCEN Form 114 – 特定の外国に保有する金融資産の報告書も必要となります。税金申告書を提出していない場合、故意ではないことが必要です。故意ではない行為とは 、例えば単なる間違い、見逃しまたは誤解などが挙げられます。この報告義務を免除されるためには、過去5年間において所得税の限度額を超えていないことまた資産の額が市民権や永住権を放棄する時において200万ドルを超えていないことのほかに、過去5年間において税金が25,000ドルを超えていないこと、該当する過去5年間について要求される税金の申告書の全てを作成して提出することを約束するなどが挙げられます。 市民権や永住権を放棄する日直前の資産の売却益と言いましたが、次のものは例外として対象になりません。繰延べされた報酬や特定の税金繰延の勘定、信託の中の一部は例外とされております。永住権を保有する日本人は, 永住権を放棄する際に、このホーム8854を必ず作成して提出することを忘れてはなりません。

山口 猛、パ―トナー
Yamaguchi Lion LLP
9/28/2019

Copyright @ 2016 Yamaguchi Lion LLP | All Rights Reserved