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IRSがAPA申請フィーを大幅値上げ

米国公認会計士 三村琢磨(コスモス国際マネジメント)

 内国歳入庁(Internal Revenue Service、以下“IRS”)は2018年2月6日付で、Advance Pricing Agreement(移転価格税制上の関連者間取引に係る事前確認、以下“APA”)の申請料金であるユーザー・フィーを、現行から2段階で引き上げる事を発表しました。具体的には以下の通りとなります:

(第1段階)2018年6月30日以降に提出されるAPA申請について:
•新規のAPA申請:現行の$60,000→$86,750
•APAの更新申請:現行の$35,000→$48,500
•小規模APAの申請:現行の$30,000→$42,000
•APA内容の変更申請:現行の$12,500→$17,750

(第2段階)2018年12月31日以降に提出されるAPA申請について:
•新規のAPA申請:$86,750→$113,500
•APAの更新申請:$48,500→$62,000
•小規模APAの申請:$42,000→$54,000
•APA内容の変更申請:$17,750→$23,000

 2015年末(同年12月29日以降の申請分より)にも値上げがあった事を考えると、来年2019年以降のユーザー・フィーは、例えば新規申請の場合は2015年末の値上げ以前の$50,000から$113,500(約1,200万円)へ、小規模APA(売上$500百万未満、申請対象の関連者間取引額が年$50百万以下など4つの全基準を満たす中小企業による申請)についても2015年末の値上げ以前の$22,500から$54,000(約570万円)へと、いずれも約3年間で2倍以上の値上げ幅となりました。
 これだけの、先進国としては通常考えられないような値上げを行った理由は、米国財政悪化に伴うIRSの予算不足です。IRSでAPAを担当するAdvance Pricing and Mutual Agreement(APA及び相互協議)部門のディレクターは某専門誌の取材に対し「予算不足の問題を踏まえ、APAにかかる総費用を下回るフィーを請求することはもはや出来ないと決断した」とEメールにて回答したそうです。要するに、今後APAに係るIRSの対応期間短縮、合意の確実性アップなどの税務行政サービスが向上するということではなく、今までのフィーが少なすぎたので今後は適正に徴収しますという理由のようです。
 確かに、一つの案件に関する審査や納税者との度重なる打合せ、二国間APAの場合はその後の相手国税務当局との交渉を経てAPA合意に至るまで、米国では平均3年程度を費やしますので、それにかかる担当官の勤務時間、および関連者間取引価格の分析に使用されるデータベース等の費用を合わせると相当な額になるであろうことは確かです。ビッグ4会計事務所系等の移転価格専門家が企業からその何倍ものAPA業務報酬を請求することを考えると、未だそれほど高くはないとIRSは思っているかもしれません。しかし、日本など申請手数料をとらない国も少なくない中、国家に対してこれほどの手数料を払ってまで、事前に価格を合意してもらうメリットがあるのか、多くの企業が考え直すきっかけになるかもしれません。
 直近2016年度のIRS・APAレポートによると、二国間APAの相手国として日本は未だに最大の相手国の一つであり、特に処理件数では全体の54%と未だに圧倒的多数を占めています。しかも日米間APAにおいてはInbound案件(日本の親会社と米国子会社間の取引)が多くを占めています。つまり、今回のIRS値上げで被害を最も受けるのは日系企業であろうと思われます。
 一つのアドバイスとしては、既にAPA申請を決定あるいは真剣に検討している企業は、フィーが上がる前に申請をしてしまうことです。現在のAPA規則では、フィーを先に満額払えば、その後120日以内に(正当な理由があれば更に30日の延長も可)完全なAPA申請書を提出する事を条件に、フィー支払日を申請日とみなすことが認められます。収益源であるAPAの仕事を失いたくないビッグ4系などは当然、この方法をアドバイスしてくると思います。しかし、今までもコストにメリットが見合わないと思われるAPAを専門家に勧められて行っている企業が多いと思われます。それら企業にとっては、今般のIRSのフィー大幅値上げを機会にAPAの有効性を再検討することも必要でしょう。

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