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トランプ大統領が税法改正案に署名 法人税について

2017年12月20日、トランプ大統領は税法改正案に署名して法律 (Tax Cuts and Jobs Act)としました。クリスマス前に是非サインをしたいと言っていたトランプ大統領は両院の改正案の調整が終わって大統領のオフィスに届けられるやいなや直ちに署名するというあわただしいスケジュールでした。ロシヤとの間の選挙妨害の嫌疑がかけられて雲行きが怪しいトランプ大統領にとっては何とか国民の目をそらすヒットが欲しかったのでしょう。そしてこの税法改正は確かにアメリカのビジネスや個人の納税者の税金を大きく引き下げる改正なのです。下院、上院が調整した税法改正の概要を見てみましょう。

法人税に関する改正

法人税率
法人税率は35%から一律21%へ引き下げられます。2018年1月1日からの実施です。

法人の代替ミニマム税の廃止
法人の代替ミニマム税は廃止されます。

減価償却
過去において初年度一括償却した後のボーナス減価償却は残額の50%であったものが、100%減価償却できることになります。ということは設備投資した全額が経費として認められるということになります。しかし、この100%ボーナス減価償却は2022年までであり、2023年の設備投資については80%、2024年の設備投資については60%、2025年については40%, 2026については20%の減価償却になります。 又、この新しい減価償却は新規設備のみならず、中古の設備投資についても適用されます。高級車の減価償却については初年度減価償却が1万ドル、2年目16,000ドル、3年目の9,600ドル、4年目以降が5,760ドルになります。初年度一括償却については従来50万ドルまでという限度が設定されておりましたが、これを100万ドルまで引き上げました。さらにこの初年度一括償却は設備投資額が200万ドルを超えると漸減することになっておりましたが、これを250万ドルを超えると漸減すると変えました。さらにこの初年度一括償却は宿泊設備、屋根、暖房器具、空調器具、冷房器具、火災防止器具、警報システム、防犯システムなどにも適用されます。

会計方法
現金主義を利用できる会社は売り上げが500万ドル以下の規模の小さい会社になりますが、この改正法では過去3年間の売上が2,500万ドル以下の会社に適用されることになります (インフレ調整あり)。 C法人がパートナーになっていないパートナーシップや S 法人、その他パス スルー組織 (組織自体は課税されずパートナーやメンバーのレベルで課税される組織)は従来通り現金主義を利用することができます。税務上の在庫の評価は会計とは違いますが、2,500万ドル以下の売上規模の会社の場合、会計上の在庫評価額を使うことが許されます。製品を製造したり、購入した場合、その原価には原材料費、労務費、間接費などを入れます。そのほか一般管理費の中にも原価に入れるものがあります。税務上、これらの一般管理費の一部を原価に組み入れる規則を資産化ルール (Uniform capitalization rule – UNICAP Rule)と言います。しかし、この規則は売上げ1,000万ドル以下の会社には適用されませんでした。改正法では、2,500万ドル以下の売り上げ規模の会社の場合には経費の一部を資産化する必要はありません。

経費控除
控除できる金利については新たに制約が設けられました。すなわちビジネスに関連する金利収入、当該年度の調整後の課税所得の30%及び当該年度のフロアプラン (車のデイーラーの金融方法)の金融のための金利の合計額を上限として金利は控除できます。これを超過する部分については永久に繰り延べすることができます。また2,500万ドル以下の売上げの会社はこの制約は適用されません。更に不動産開発、再開発、建設、再建設、取得、転換、賃貸、事業、経営、リーシング及びブロカー業務にも適用されません。このビジネス金利には投資の為の金利が含まれません。繰越損失については全額利用することができなくなります。即ち、課税所得の80%までしか利用できないのです。更に注意すべきは、損失の繰越は20年であったのですが、繰越損失は永遠に繰り越すことができるようになり,
繰戻しの方は認められなくなりました。この改正法の下では等価交換は不動産に限定されることになります。 営業用の不動産には適用されません。この等価交換の場合、実施日が2018年からになります。2017年12月31日前にすでに不動産が売却されていたり、新築不動産を取得していた場合にはこの改正法は適用されません。国内の生産活動に関する恩典 (Domestic production)は廃止されました。接待費関係費用の控除は厳しくなり、接待、ビジネスや社交のためのメンバーシップ費用、接待に関連する設備の費用が否認されることになります。交通費の支払いについても従来許可されていたものが認められなくなりました。 自宅からの通勤費用も控除できません。食事に関連する費用については、従来通りビジネスの為に必要な食事の費用は、その50%パーセントを控除することを認めます。また会社のカフェテリアなどの費用も2025年までは控除できますが、それ以降は控除出来ません。 改正法の下で試験研究開発費については5年の均等償却が規定されております。外国での研究開発費については15年の償却の規定になっております。発生主義会計を採用する会社は該当する財務諸表上の所得を認識する年度に税務上の課税所得も認識することが要請されます。

税額控除
改正法の下で認められる税額控除には、次のようなものがあります。奇病のための薬品のテストのための費用に関する税額控除 (Orphan drug credit) は50パーセントから25%に減少されます。建築の修復に関連する税額控除は1936年前の建築物に関して税額控除を10%に限定しようとするのを止めて、歴史建造物については20%の税額控除 (Rehabilitation credit) を維持します。家族や医療を理由とする税額控除は 給与の12.5%の税額控除を認めますが、医療費などの支払いが給与の50%を超える場合には、税額控除は0.25%ずつ増加されます。最長12週間までこの税額控除が認められます。適用は2018年と2019年のみです。

給与報酬
従来、上場企業のトップ経営者に支払われる報酬の控除には限度がありました。そしてその適用されるトップ経営者は社長及び四人の高給取りの経営者達でした。改正法では社長の他、財務担当のオフィサーとその他のオフィサーについては3人の高給取りのオフィサーに限るとしました。 この改正法は将来の全ての年度について適用されるとし、コミッションや成果ベースで支払う報酬は対象から外されました。 改正法では、会社から授与された株式から発生する所得が課税されるのを繰り延べることができます。ただし、授与される権利が発生してから30日以内に繰り延べることを選択しなければなりません。

外国に蓄積された所得の課税
改正法では、10%パーセント以上の株式を所有する外国企業から受け取った配当については、100%を控除することが認められます。もしこれがハイブリッド配当 (Hybrid dividend)である場合には、控除は適用されません。ハイブリッド配当とは支配された会社 (Controlled foreign corporation)から受け取った配当になります。この全額控除を認められた配当に関しては、税額控除は認められません。国内法人が保有する外国の会社の株式保有期間が365日以内の場合、控除は認められないことになります (過去731日のうち365日に満たない場合には控除はできません)。 この改正法の下では、2017年以前にアメリカの会社が10%以上の株式を保有する外国法人が1986年以降に蓄積してきた外国源泉の所得の一部を課税所得に加算しなければなりません。控除される金額については過去において蓄積してきた所得が現金で保存されているか、その他の資産で保有されているかによって違います。税率は現金で保存されている場合は15.5%、その他の場合には8%になります。それに見合う外国税額控除は認められません。追加の税金は8年にわたって支払うことができます。10%以上の外国の会社の株式を保有する国内法人が、外国源泉の無形資産から生ずる所得 (Foreign-derived intangible income – FDII)またグローバルな低額課税を受ける無形資産 (Global intangible low-taxed income – GILTI)から生ずる所得を得た場合には軽減税率が適用されることになっております。外国源泉の無形資産から生ずる所得については、税率は2018年から2025年までは13.125パーセント、その後は16.406パーセントになります。グローバルな低額課税を受ける無形資産から生ずる所得については2018年から2025年までは10.5パーセント、それ以降は13.15パーセントになります。

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