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ASU 2017-05 その他損益 – 非金融資産の認識中止によって生じる損益追加ガイダンス

 2017年2月22日に米国財務会計基準審議会、Financial Accounting Standards Board (“FASB”) はAccounting Standards Update (ASU) No. 2017-05, “Other Income—Gains and Losses from the Derecognition of Nonfinancial Assets (Subtopic 610-20): Clarifying the Scope of Asset Derecognition Guidance and Accounting for Partial Sales of Nonfinancial Assets” “ASU 2017-05”)「その他損益 – 非金融資産の譲渡によって生じる損益の明確化」を発表しました。現在アメリカには資産譲渡の売上認識についていくつもの会計基準が存在しています。FASBはこれらの基準を減らし明確化する試みの一つとして2014年9月にSubtopic 610-20「その他損益 – 非金融資産の譲渡により生じる損益」を発表しました。これは非金融資産を譲渡した場合の売上認識についてで、例えば自社ビル譲渡などがこれに該当しますが、このガイダンスは複雑でわかりにくいとのコメントが多く出されました。特にSubtopic 610-20の適用対象となるin-substance nonfinancial asset(実質的非金融資産)の定義が曖昧とのコメントが多く寄せられました。それを明確化し追加のガイダンスを提供したのがASU 2017-05です。これにより大きく影響をうけるのが不動産業界と言われています。

主な内容は以下の通りです。

1.適用範囲の明確化
 Subtopic 610-20では譲渡資産が金融資産と非金融資産の集合体の場合、ここに含まれる金融資産が実質的非金融資産としてSubtopic 610-20 の対象となるかどうかが曖昧でした。ASU2017-05はこれを、契約上相手方に譲渡することになっている資産集合体の公正価値のほぼすべてが非金融資産からなる場合は、この資産集合体に含まれる金融資産も実質的非金融資産に含む、と明確化しました。例えばビルと家賃債権をまとめて譲渡する場合、家賃債権は金融資産ですが、ビルの公正価値がビル・家賃債権集合体の公正価値のほとんどを占めている場合は家賃債権も実質的非金融資産に含むということです。ASU 2017-05は事業や非営利活動の譲渡にはあてはまりません。これらは従来通りSubtopic 810-10, Consolidation—Overall(連結)にて規定されます。また持分法投資の譲渡についても実質的非金融資産として認識された場合を除いては従来通りTopic 860, Transfers and Servicingの適用となります。

2.非金融資産の区別
 ASU 2017-05は非金融資産と実質的非金融資産を区別し、それぞれ譲渡先に支配権が移転した時点で資産から外すことを明確化しました。

3.部分売却
 非金融資産及び実質的非金融資産の部分譲渡にはいろいろなケースがあります。例えば非金融資産を売却した結果売却先会社の非支配持分を受け取ったり、非金融資産を所有する子会社の一部を売却した後も子会社の非支配持分を保持するなどです。このような部分譲渡の場合、その資産を保有する法的主体の財務支配権と資産自体の支配権両方が移転した時点で資産からはずすことを明確化しました。支配権を持ち続ける場合は資産から外すことはできません。また、移転または交換の対価として移転した資産に対する非支配持分を受け取る場合、現金以外の対価として会計処理し、当該非支配持分を公正価値で測定することを明確化しました。

4.適用時期
 本ASUの適用開始と移行措置は、公開会社は2017年12月15日以降に始まる会計年度、その他は2018年12月15日以降に始まる会計年度です。早期適用は公開会社その他とも2016年12月15日以降に始まる会計年度に認められています。

阿久澤るみ子、パートナー
Yamaguchi Lion LLP
June 2017

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