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米国会計・税務ニュース

 今回は、米国財務会計基準審議会が会計原則の簡素化プロジェクトの一環として発表している会計基準を幾つか取り上げて、簡単に説明します。

1.繰延税金の貸借対照表上の分類

 2015年11月に米国財務会計基準審議会、Financial Accounting Standards Board (“FASB”) はAccounting Standard Update (ASU) No. 2015-17, “Income Taxes (Topics 740) – Balance Sheet Classification of Deferred Taxes”(“ASU 2015-17”)を発表しました。ASU 2015-17は、貸借対照表における繰延税金の表示方法を変更する会計基準です。
 現行の基準では、繰延税金資産・負債を流動、固定(非流動)に区分して表示することを要求しています。ASU 2015-17では全ての繰延税金資産・負債を非流動として表示します。FASBはこの区分表示が有用な情報になっていない、と言う利害関係者からの意見を反映させるべく、またこの区分表示を行うために掛かる企業のコストを削減すること、を考慮して発表しました。 この基準書により区分の基準になっていた資産・負債の分析や繰延が反転するタイミングを明確にする必要がなくなりました。
 ASU 2015-17の適用時期については、公開会社においては2016年12月15日以後に始まる会計年度、その他の会社においては2017年12月15日以後に始まる会計年度、となっています。早期適用も認められており、適用した場合、財務諸表の報告年度以後の変更、または報告年度全ての年に遡って適用することもできます。
 ASU 2015-17は、国際会計基準、IFRSのIAS 1, Presentation of Financial Statementsが要求している繰延資産・負債の表示方法とも整合性がとれる変更でもあります。

2.のれんの減損テストの簡素化

 2017年1月に発表されたASU No. 2017-04, “Intangibles – Goodwill and Other (Topics 350) – Simplifying the Test for Goodwill Impairment”(“ASU 2017-04”)は、暖簾の減損を決定するために踏むステップの簡素化です。現存の基準で要求している事業単位ごとに帳簿価額と公正価値を比べるステップは同じですが、公正価値を算出する際、資産と負債をあたかも買収が行われたものと仮定して算出していました。暖簾を含む純資産と公正価値を比較して減損を判断します。
 ASU 2017-04の適用時期については、株式が公開されて会社では2019年12月15日以後、その他の公開会社では2020年12月15日以後、その他の会社では2021年12月15日以後に始まる会計年度となっています。早期適用は2017年1月1日以後から認められています。

3.流動・非流動に区分された貸借対照表上の負債区分の簡素化

 2017年1月にその発案が投票されたBallot Proposed ASU “Debt (Topics 470) – Simplifying the Classification of Debt in a Classification Balance Sheet”は、貸借対照表上の債務の表示方法の簡素化に関する提案です。この基準(発案)により貸借対照表の日付から契約上、一年を超えて決済される債務、または決済を一年を超えて延期できる権利がある債務については区分表示を非流動とすることを要求するものです。貸し手が契約条項として支払を要求する権利を持っている場合でも、次の状況が満たされていれば非流動の表示となります。
・ 借入契約の条項に違反がないこと
・ 貸し手が支払要求の権利を一年超行使しないこと
・ 財務諸表が発行される前に貸し手が支払要求の権利を破棄していること
・ 12ヶ月以内に借入契約の条項に違反が起こる可能性が低いこと
・ 債務償還や債務再編の会計処理に変更を及ぼさないこと

 貸し手が支払要求の権利を破棄した債務については、貸借対照表上で別表示が要求されます。また期間など破棄の条件も開示しなければなりません。
 注意すべき点としては、貸し手が支払要求の権利を破棄していることです。現行の基準では財務諸表が発行される前に流動債務の借り替えをして決済日が一年超になった場合、非流動で表示できますが、この発案では流動債務として表示されます。あくまで貸借対照表の日付に存在した債務が基準となっています

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