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ヒラリー・クリントンの税務申告書

アメリカは大統領選挙の終盤戦に入っております。トランプ氏の暴言、誹謗が続いたために、国民の人気は落ちて、現在のところヒラリー・クリントン氏の方が優勢です。もちろんあと2ヶ月の間に何が起きるかは分かりませんので決して予断は許しません。

ところで大統領候補者達は、自分の税務申告書を公表するのがしきたりになっております。法律上、強制ではないようですが、慣習的に歴代の大統領候補者達は、税務申告書を公表してきたのです。トランプ氏は、現在、IRS(内国歳入庁)が彼の税務申告書を調査中ということで、いまだに公表しておりません。IRSのほうは、調査中でも公表することにはまったく問題ないと言っているのですが、トランプ氏は何か問題があるのか公表しようとはしないのです。一方、ヒラリー氏の方は2015年の税務申告書を公表しました。ヒラリー氏と夫のビル・クリントン氏との2015年度の合算所得額は約10億円であり、税率にすると34.2パーセントの税金を納めております。税務申告書の内訳は、ビル・クリントン氏が、スピーチの報酬として5億円を稼ぎ、ヒラリー氏は彼女の国務長官時代のことを書いた本を出版したことで出版社のサイモン・シュスター社から3億円の報酬を得ました。そのほかクリントン基金を中心に1億円の寄付をしております。利息、配当収入は1億円程あり、給与所得はほとんどありません。クリントン夫妻は、ニューヨーク州の郊外に住んでいるので、ニューヨーク州の税金を加算すると、実効税率40.5パーセントの税金を払っております。

民主党の副大統領候補であり、バージニア州の上院議員であるティム・ケイン氏も妻のアン・ホールトンさんと合算申告をしており、過去10年間の税務申告書を公表しました。それによると税率は20.3パーセントになっております。クリントン夫妻は1977年以来、毎年税務申告書を公表しております。トランプ氏はさらに、“自分の税務申告書は他人の知ったことではない。申告書を見ても何も出てこない”と言うのです。トランプ氏の選挙参謀達は、“トランプ氏に対する税務申告書を公表しないことに対するヒラリー氏の非難は、ヒラリー氏が国務省長官を務めていた時に、国家の機密情報をプライベートのEメールを使って、関係者達と交信していたことに対する非難をかわすための試みに過ぎない”と言います。2012年の共和党の大統領候補であったミット・ロムニー氏を始め、共和党の議員達も、“税務申告書を公表しないということは、トランプ氏の財産の額がいくらあるのか、どのような慈善団体に寄付をしているのか、どのようなビジネスをやっているのか、またロシアとの関係などについて国民の疑惑を招くことになる”と言います。トランプ氏は、1990年代の2年間にわたってほとんど税金を払っていないし、おそらく今でもその状態が続いているのではないかと、トランプ氏の周囲の人は言います。年間100万ドル以上稼ぐ納税者は、少なくとも30パーセントの税金を払うという税法にクリントン夫妻は賛成しております。

山口 猛、パートナー
Yamaguchi Lion LLP
2016年8月

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