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共和党の税法改正案

共和党の大統領候補は、7月18日から行われる共和党大会でトランプ氏が正式に任命されることになります。この大統領の予備選挙中に、大統領候補として参加した候補者達がアメリカの将来の税制の考え方について意見を述べました。ニューヨーク・タイムス紙の7月10日の記事の中に、これらの大統領候補達の税制に対する考え方が紹介されておりました。共和党の下院の税法改正案はトランプ氏よりも、選ばれなかった候補者達の考え方の方が近いのではないかと言うことが書かれておりました。テキサス州のテッド・クルーズ上院議員は、将来、国民は郵便はがきで税金申告書を提出できるようにすると述べました。ジェブ・ブッシュ氏は、企業が借り入れをするときに支払う金利を経費として控除するのを禁止し、その代りに設備投資をする企業に、即時、投資額を経費として処理することを認めるようにするというのです。通常は、設備投資した額は、耐用年数に基いて減価償却しなければなりませんので、設備投資した額がすぐに経費処理出来るというのであれば、企業にとって投資意欲がわき、経済発展に寄与すること間違ありません。フロリダ州のマルコ・ルビオ氏は、アメリカの企業が海外で稼ぐ利益に対しては課税しないことを提唱しました。もっとも斬新な改正案を提唱したのは、下院の議長であるウイスコンシン州のポール・D. ライアン氏の案であり、所得に税金を課す代わりに、消費に税金を課すという案です。いわゆる消費税と言われるものであり、アメリカではセールス・タックスと言う名前で、消費者が物を買うときに取られる税金です。テッド・クルーズ氏とマルコ・ルビオ氏が賛成しております。現在のセールス・タックスは州の税金であり、国の税金ではありません。共和党が考えているのは、国をベースにした消費税です。ヨーロッパの付加価値税に似ているかもしれません。

このようにトランプ氏以外の候補者の考え方の方が下院の共和党の税法改正の方針に近いのですが、トランプ氏の考えが下院共和党の考え方に近い部分もあるのです。それは金持ちに対して最大の減税を用意しているということです。即ち、投資から発生するキャピタルゲインの税率を下げたり、高額所得者に対する税率を下げるというのです。更に相続税を全面的に廃止したり、高額所得者が稼ぐ投資所得に対して3.8パーセントの税金を追加して課するのを止めることです。それに加えて、高額所得者が利用する加速度減価償却のような税務上有利な方法を止めて税金を課す代替ミニマム税を廃止しようとします。代替ミニマム税とは、そのような税務上の恩典を使って税金を払わない或いは税金を少なく払う高額所得者に、最低でもミニマムの税金を払わせようとする税金です。

トランプ氏が、従来からの所得税と言う範疇の中で改正案を考えているのに反して、ライアン氏の改正案は、課税のベースを所得から消費に変えるという根本的に違った手法を取っております。トランプ氏の改正案を取った場合、税収の損失はより多いことが予想されており、国の予算に対する影響がより大きいという予想がされております。

付加価値税は消費に税金を掛けるので、将来の為に節約をするのに役に立つのではないかと言われており、将来の為の投資を促進するではないかと言われております。しかし、この消費税に批判的な意見を述べる人もおります。貧困者は、稼いだ金をすぐに家や食料、医療費、交通費、携帯電話代、散髪代など日常の生活費に使わなければならないではないかと言うのです。ライアン氏の消費税の方を採用すると200兆円の減収になるのに対して、トランプ氏の案を採用すると、将来10年間で950兆円の減収になるという試算があります。トランプ氏が大統領になると、税制の方も大きく変わるのではないかと予想されており、その影響が懸念されております。トランプ氏の政策に注目する必要があります。

山口 猛、パートナー
Yamaguchi Lion LLP
2016年7月

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