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外国金融資産の報告

外国金融資産の報告
(Statement of Specified Foreign Financial Assets)

金持ちのアメリカ人の中には、自分の資産を外国に移転して、そこで得る所得を税務申告の際に、申告しない人がいます。所謂、所得隠し、或いは、税金逃れです。その人達の数があまりにも多くなり、金額も大きいことが分かり、アメリカの国税庁 (Internal Revenue Service – IRS)が、外国にあるアメリカ人の金融資産の報告を求めるようになりました。アメリカ人は、当然、これに従わなければならないのですが、日本人の駐在員達も、この規則に従わなければならなくなりました。日本からの駐在員達は、アメリカに来る前に日本の銀行口座や証券口座を持ち、生命保険などをかけております。これらの金融資産を報告しなければならないと言うのです。
日本人の駐在員達にも長期に滞在するビザを持った人達や短期で来る人達がおります。所謂、グリーンカードを持った人達は、アメリカ市民と同等に扱われます。Eビザとか Lビザを持った人達は、5年とかの長期の滞在と見られますので、やはり、この外国金融資産の報告をしなければなりません。しかし、短期の滞在の駐在員の場合には、この報告の義務はありません。長期滞在の駐在員達は、アメリカの居住者として、アメリカ市民と同じ個人所得税申告書 (フォーム1040)を提出します。短期滞在の駐在員の人達は、非居住者のフォーム (1040NR)を使って申告することになります。
ところがE-2ビザを持っていても、短期滞在するような人がおります。その場合に日本にある金融資産の報告をしなければならないかという疑問があります。この様な人の場合は、ビザの種類は確かに長期駐在のビザですが、報告する必要はないと思われます。あくまで実質的なステイタスが重要です。また、年の途中で帰国する人がおります。このような人達は、帰国前の期間については、日本にある金融資産の報告をする必要がありますが、帰国した後については、報告の義務はありません。一方、年の途中で来た人達については、日本にある金融資産の報告はしなくていいということになっております。勿論、個人の税金申告書は、きちんと提出するという条件がついております。
次に、いくらの外国金融資産があれば、報告しなければならないかの問題があります。結婚していない人の場合、年度末で5万ドルを超えなければ、或いは、年の途中で残高が7万5,000ドルを超えなければ、報告する必要がありません。結婚している人で、夫婦合算申告をする人達は、日本にある金融資産が年度末で10万ドルを超えなければ、又は、年の途中で15万ドルを超えなければ、報告する義務はありません。結婚はしているけれども、夫婦で個別申告をするような人の場合は、年度末で5万ドルを超えなければ、或いは年の途中で7万5,000ドルを超えなければ、報告する必要はありません。報告する金融資産の残高は、その資産の時価 (Fair Market Value)ということになっております。銀行残高などは、残高そのものが時価になりますが、証券口座のような場合には、時価は買ったときの額よりも高くなっている時もあるし、低くなっているときもあるので、まさに時価で報告することになるのです。
生命保険も金融資産ということになっており、日本にある生命保険については、報告する必要があります。しかし、掛け捨てのような生命保険は報告する必要はなく、積み立て型の生命保険の場合、報告する義務があります。このような生命保険の場合に報告する額はどの額になるかというと、保険会社が報告してくる積み立てた額になります。Cash value がFair Market Valueになるのです。これらの金融資産は、あくまで日本に保有する金融資産であり、アメリカの銀行や証券会社、保険会社にある金融資産は報告する必要はありません。気をつけなければいけないのは、報告を怠ると、或いは、期限までに提出しないとペナルテイーがかかることです。報告書を提出しない場合のペナルテイーは1万ドル。IRSが、通知してから90日以内に報告しないと、さらに1万ドルのペナルテイーが課せられます。最高5万ドルまで加算されます。合法的な理由があれば、ペナルテイーは免除されますが、やはり期限内に報告するほうが面倒がなくていいので、報告を怠らないようにしてください。

 

山口 猛、パートナー
Yamaguchi Lion LLP

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