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外国人の不動産売却に関する源泉税率の引上げ

アメリカでも都市を中心に大分不動産価格が値上がりしてきました。特にニューヨークのマンハッタンでは、ヨーロッパ、中東、中国などの金持ちがコンドミニアムを買い続けているのです。その為に不動産の価格が押しなべて値上がりしており、この影響が郊外の不動産の値上がりにも影響しております。日本人もこの不動産の値上がりに目をつけて投資しているのが現状です。外国人の場合、一般にアメリカに投資する時に、その投資をビジネスとして行っていない限り、投資からのキャピタルゲイン(売却益)に対する税金は免除されています。即ち、単にアメリカの証券に外国から投資して、売却益を得るような場合、税金は掛からないのです。しかしながらアメリカの外国人による不動産の売却益は、アメリカで不動産投資をビジネス、又は商行為として行っているのと同じであるとみなされて、税金を取られることになっております。これは税法897条の外国人による米国不動産投資税法 (Foreign Investment in Real Property Act ? FIRPTA) に基づきます。外国人の場合、アメリカには居住しておりませんので、税金は売却益を外国に送金する時に、源泉税という形で取られることになっております (規則1445 (a), 1445 (e) (3), 1445 (e) (4), 1445 (e) (5)) 。従来、この源泉税率は、売却額の10%となっておりました。この源泉税率が、15%に引き上げられるというのです。売却益ではなく、売却額の15%ということにご注意ください。実施日は、2016年2月16日以降となります。

しかしながら、この15%の税率が適用されなくて、10%の税率が以前と同じように適用される場合があります。それは外国人から不動産を購入する買い手が、自分が住む為にその不動産を購入する場合です。コンドミニアムなどが考えられます。更に、購入価格が30万ドル以上、100万ドル以下という条件が付いております。100万ドル以上するコンドミニアムを購入するような人の場合、15%の源泉税率が適用されるのは当然かと思います。30万ドル以下の不動産の場合については、買い手がその購入する不動産を自分の住居として年間50%以上使う場合は、税金を源泉する必要はありません。そして30万ドルから100万ドルの売却額の場合、源泉税率は10%でいいとするのです。源泉徴収するのは買い手です。外国人の売り手が源泉徴収の必要が無いという証明書を提出しない限り、買い手は源泉徴収しなければならないのです。買い手は購入した日から20日以内に、フォーム8288(Form Instructions)と8288Aを使って、不動産の売却額や税金の徴収額をIRSに報告します。外国人の売り手は、不動産を売却して利益を得たのですから、アメリカで税金の申告をします。源泉徴収された税金は、申告書上で税額として控除します。日本人の場合、日本で税金の申告書を提出しなければなりませんが、アメリカで払った税金は日本で外国税額控除ということで、日本の税金と相殺できる仕組みになっております。又、売却益に対する税額が、売却額の15%の源泉徴収額を下回る場合は、事前にIRS (Internal Revenue Service – 内国歳入庁) に届け出ることで少ない税額を払うことが出来ます。売却損の場合は、勿論、税金はありません。この源泉税額を削減するためには、外国人の売り手はIRSに源泉証明書 (Withholding Certificate) を請求しなければならないのです。この源泉証明書を貰う為には、外国人はまず納税者番号 (Taxpayer Identification Number – TIN) 取らなければなりません。IRSは申請を受けてから、90日以内に源泉証明書を発行します。外国人の売り手は、不動産を売却する前に、或いは売却した日に、書面でIRSに源泉証明書を請求した旨を買い手に通知しなければなりません。IRSは、源泉額が売却益に対する税額を上回っており、減額した税額でも徴税に問題が無いと判断すれば、源泉証明書を発行してくれるのです。納税者番号を取得するには、時間がかかりますので、なるべく早くこの番を取得する手続きを始めることをお勧めします。

 

山口 猛、パートナー
Yamaguchi Lion LLP

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